ブックタイトルプレミアムヘッドホンガイド Vol.19

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概要

プレミアムヘッドホンガイド Vol.19

 欧州最大、すなわち世界的に見てもトップ規模のオーディオブランド、フォーカル。単に企業規模という数の話だけではなく、会社としての質、つまり開発力や製造力においても世界屈指の存在だ。スピーカーの中核であるドライバーユニットを自社で設計し製造できる数少ないブランドのひとつであり、何百万円単位のハイエンドオーディオ、エンジニアやミュージシャンの要求に応えるプロオーディオ、限定された条件で最良のサウンドを求められるカーオーディオ、そのすべての分野で高い評価を受けている。スピーカードライバー開発の経験も生かしたヘッドホン「UTOPIA」にて、ホームユースのヘッドホン分野にも進出してきたことは記憶に新しい。 そのフォーカルが新たに展開するのが、彼らが「NEW MEDIA」と呼ぶモバイルオーディオ製品だ。その第一弾として発表されたのがポータブルユースのイヤホンとヘッドホンだ。ここでは注目のワイヤレスイヤホン「SPARK WIRELESS」を紹介しよう。 一見するとスタンダードなワイヤレスイヤホンだが、実際に手にすれば「さすがフォーカル」と製品の完成度に唸らされ、そしてそのクオリティで実売1万円を切るという価格にも改めて驚かされる。 たとえばハウジングにある同社のロゴをよく見てみてほしい。その文字は印刷でも刻印でもなく筐体を繰り抜くように刻み込まれており、その奥には非常に精密なメッシュが施されている。空気を外に逃がしてドライバー背面からハウジング内にかけての空気の圧や流れを制御するポート周りが、極めて自然にデザインと一体化されているのだ。サウンドとデザインを秤にかけずどちらも高めるこの姿勢と工夫は、ハイエンドオーディオの世界で磨かれたテクニックなのかもしれない。ちょっとしたところだが、その細部にこそ彼らの在り様、妥協のなさが強く示されているように思える。 フォーカルは使い勝手の重要さも見落とさない。付属ケースはコンパクトなので気軽に持ち歩け、日常使いでよくおきるケーブルの絡みや痛みを防げる。ケース内側には同じく付属のショートタイプUSBケーブルを忍ばせておくためのポケットも装備。充電忘れにもさっと対応できる。装着時のケーブルの取り回しには、襟留めケーブルクリップが役立つ。 そしてサウンドにおいて印象的なのは発声発音の明確さ。声も楽器も実にくっきりとした音像で描き出される。モバイル、すなわち屋外の騒音下での利用を想定したチューニングだろう。音の余韻など屋外では聴こえにくくなる細かな成分よりも、まずは音の本体をクリアに届けることに重きを置いていると感じる。ベースなどの存在感を少しプラスしてくれる低音の大柄さも同じ理由からだろう。その狙い通りの音を具現化するチューニング技術、空気孔や吸音材の配置などのノウハウはスピーカー設計のそれに由来するそうで、重ねて「さすがフォーカル」と唸らされる。 フォーカルの新たな挑戦。その方向性を明快に示すエントリーモデルの誕生を歓迎しよう。使いやすさだけではなく、音響設計にもこだわる優秀機はコスパ最強だ!SPARK WIRELESSFOCALSPEC ●通信方式:Bluetooth標準規格Ver.4.1 ●対応コーデック:aptX、SBC ●ドライバー:6.5mm径マイラー振動板搭載・ダイナミック・ドライバー ●連続音楽再生時間:8時間 ●質量:14g ●付属品:イヤーチップ(S/M/L)、クリップ、キャリングケース、充電用USBケーブル※2017年12月下旬発売予定¥OPEN 投 票No.090SphearX @129 ? Y @180 ?SphearCompetitor 2Competitor 1低歪を実現する音響調整フォーカルでは、ポータブルオーディオ製品を設計する際にはレファレンスとする周波数特性カーブを描けることを目標するだけでなく、徹底して歪を抑制した設計を行う。ワイヤレスイヤホンの場合、電気回路的に特性を補正するなどのアプローチも可能だが、フォーカルは徹底してアコースティックな調整にこだわっている。その理由は、電気回路での補正では不可能なレベルの低歪化をドライバーとハウジング設計を駆使して実現しているからに他ならない。CHECKPREMIUM HEADPHONE GUIDE 59