ブックタイトルPREMIUM HEADPHONE GUIDE vol.12

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概要

PREMIUM HEADPHONE GUIDE vol.12

 このような確固たるスタンスのもとで生み出されたのが、“m”シリーズの第1弾として誕生した「MXH-DBA700」である。ホーンをイメージしたアルミボディに、高域用のバランスド・アーマチュア・ドライバと中低域用のダイナミック・ドライバをハイブリッドで搭載した、挑戦的なアイテムだ。「ホーン型のデザインで斬新さを出したかったため、その分、ユニットの配置に苦労しましたね。再生周波数帯域の波形がたとえ理想に近くても、実際に音を聴くとイメージしていた音とは違うということはざらでした。初のハイブリッド型だったからこそ苦労しましたが、その経験がいまに活かされていると思います」と落合氏。 このように挑戦的な製品開発を続けてきたマクセルのノウハウが凝縮されたのが、“m”シリーズのフラグシップにあたる「MXHDBA900」だ。バランスド・アーマチュア・ドライバとダイナミック・ドライバのハイブリッド構成は「MXH-DBA700」と同様だが、「MXH-DBA900」の開発ではドライバ間のつながりを最重要視し、ドライバの設計から着手したのだ。それぞれのドライバにどの周波数帯域を担わせるか。そして、異なるドライバ間の再生帯域をつなぐ部分でいかに自然な違和感のない聴こえ方にするか。落合氏はユニットの配置やクロスオーバー周波数を工夫することで、こうした難題をクリアした。中高域を担うバランスド・アーマチュア・ドライバを音の出口となるポートに対してストレートに配置。ダイナミック・ドライバは後方斜めに配置することで高域成分を抑え、ふたつのドライバ間のつなぎ目をなじませることに成功している。ユニットの配置や傾き、重なりが少しでも変わると音質が変わることから、シミュレーションや試聴を数えきれないほど繰り返したそうだ。気が遠くなるようなチャレンジだ。 もうひとつ興味深いのはボディもハイブリッド構造としたこと。高剛性アルミニウム合金とABS樹脂のふたつの素材をハイブリッドで採用することで、不要共振を抑えているという。「ユニットの配置を工夫したことで、ドライバ間がつながる中音域はふくよかで厚みのある音になったのではないでしょうか。『M X H -DBA900』は最も自信を持って送り出した製品ですが、私たちの挑戦はまだ始まったばかり。“m”シリーズ自体、『独自技術を採用したオーディオ製品』という命題がある以上、積極的に新しい技術の開発に取り組んでいきたいです」(落合氏)。 さらに今後の展開として、ハイレゾ対応モデルの開発も考えているそうだ。「豊かな情報量をいかに正確に伝えられるか。それがハイレゾ対応のヘッドホンだと私たちは考えています。そのために、新しい素材やドライバユニットの開発にトライしていきたい」。 これまでもこれからも、革新的なテクノロジーに果敢に挑戦するマクセル。この次にはどんな魅力的な製品が姿を現すのか楽しみだ。日立マクセル株式会社コンシューマ&ソリューション事業本部事業企画部 開発課 技師落合 誠氏使用時のクリアランスゾーンです。ピンク色の部分にはデザインや文字は入らないようにしてください。MXH-RF500\OPENSPEC ●型式:ダイナミック型 ●ドライバ口径:10mm ●再生周波数帯域:20~22,000Hz ●インピーダンス:16Ω ●コードの長さ:約0.3m ●質量:約8g(コード含む) ●付属品:抗菌イヤーピース(S/M/L)、延長コード(約0.9m/約0.3m)デュアルチャンバー高解像度の中高域を得意とするバランスド・アーマチュア型ドライバをポート近くにストレートに配置。繊細な高音をダイレクトに耳へ届ける構造とした。一方、中低域に強いダイナミック型ドライバは後方斜めに設置することで、直進性の強い高域を適度に減衰させ、高域を担うバランスド・アーマチュア型ドライバとの干渉を防いでいる。ふたつのドライバが奏でるサウンドの自然なつながりに徹底的にこだわり、原音に近いフラットな特性にチューニングされている。左がボディすべてにABS樹脂を採用した「MXH-DBA900」初期の試作機。この試作機を経て、高剛性アルミニウム合金とABS樹脂をハイブリッドで採用することに踏み切ったという。「MXH-DBA900」の内部を分解したところ。バランスド・アーマチュア型ドライバがポートに対してストレートに配置されていることがわかる。MXH-DBA900の独自技術に迫る!録音メディア開発メーカーとして、原音の再現力にこだわり、音楽の歴史とともに歩み続けてきたマクセル。その“原音の再現力に対するこだわり”をより一層高めていこうと開発されたのが“m”シリーズだ。シンボルマークの“m”は、「maxell」および「music」の頭文字であり、このマークを冠した製品には、高い音質と豊かな表現力を実現する独自の音響技術が投入されている。ちなみに、マークの縦の3本のラインは「過去、現在、未来の人」を、左右に伸びる線は「サウンド」を示し、過去から新時代に“音”でつながるコミュニケーションというマクセルのオーディオカテゴリー製品にかける強い想いが込められている。“m”シリーズとは?お問い合わせ:日立マクセル株式会社お客様ご相談センター ?03-5213-3525 http://www.maxell.co.jp/ 提供:日立マクセル株式会社ソフトウェアシステム、電子デバイスの開発に携わり、2005年より現職。ヘッドホン等の音響製品の開発を担当。長距離通勤を生かして音楽ライフを満喫中。バランスド・アーマチュア・ドライバネットワーク投 票No.079PREMIUM HEADPHONE GUIDE 41