ブックタイトルPREMIUM HEADPHONE GUIDE vol. 14

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概要

PREMIUM HEADPHONE GUIDE vol. 14

―― 昨年秋、Unique Melody(以下、UM)から初のユニバーサルタイプとなる「MAVERICK」、「MASON」がリリースされましたが、その2モデルとも日本市場専用かつ、開発に代理店であるミックスウェーブが大きく関わった製品であることに驚きました。宮永 UMは一人一人の好みに合わせたカスタムIEMを作ることを大きな目標にしているブランドです。その第一歩として、今回の「各国専用モデル」というプロジェクトが企画されました。その国ごとの音の好みや音楽環境、風土気候にマッチした製品をつくるには、各国の代理店がアドバイスするのが一番ということで、私が日本版のサウンドをコーディネートすることになったのです。―― 具体的にはどのような役割だったのですか?宮永 UMの技術力をベースに日本市場にマッチした製品をつくるため、音決めはもちろん、ネーミングやデザインにも要望を出しました。ブランドの特徴的な技術を打ち出せるよう、ドライバー構成についてもアイデアを出しています。例えば、MASONはマルチBAの最高峰クラスを目指して開発をおこない、結果的には左右各12基の構成にしました。―― 対してMAVERICKのドライバー構成は個性的ですよね。高域用BAを2基と中域用BAを1基はよく見られますが、低域のBA型1基+ダイナミック型1基という構成は独特です。宮永 MAVERICKはUMの個性を象徴するハイブリッド・カスタムIEMである「MERLIN」を出発地点として、当初はそれと同様のドライバー構成、つまり、低域用ダイナミック型、中域用BA型2基、高域用BA型2基からはじめました。しかし、UMに試作を繰り返してもらったのですが、MERLINのドライバー構成のままでは私の求める音はうまく実現できなかったのです。―― 実際に聴かせていただき、MAVERICKはミッドロー、中域と低域の間くらいがしっかりしていて、ベースやドラムスのアタック感や音の芯のガツンとした強さに主張があるように感じました。宮永 低域をダイナミック型だけに任せていた段階では、帯域ごとの音の速さにどうしてもばらつきがありましたし、音色としても私の思い描いたものとは違っていました。私はミックスウェーブに入社した当初、新人研修の一環として、耳を鍛えるためにスタジオに通っていたのですが、その時に刻み込まれた音が自分のレファレンスになっています。それを基準に考えると、ダイナミック型だけの段階ではバスドラムのアタックなどに不足を感じていました。そこでアタッカーとして低域用にもBA型を追加すると、それによって音色のキャラクターも理想に近付いたのです。一般的なマルチBAのようでありながら、低域側にはダイナミック型ならではの感触のある音に仕上がりました。周波数特性だけを見ると、当初の構成との変化はほとんどないのですが、音は変わるんですよね。―― 一方のMASONは帯域も個性もフラットなマルチBAという印象を受けました。宮永 MASONの音づくりも簡単ではありませんでした。当初は10ドライバーで開発をはじめたのですが、高域用の2基のBAドライバーへの負荷が強くて高音が潰れていました。そこでドライバーを4基に増やして各基への負荷を低減させる手法を採りました。―― 僕の印象ではマルチBAの王道を突き進めたMASON、ブランドの個性や宮永さんの理想をより強く反映させたMAVERICKといったように感じました。宮永 モデル名もMASONは「石工」という意味で「ブランドイメージを再構築するモデル」という思いを込めましたが、一方のMAVERICKは「唯一無二」という意味合いです。―― その「再構築」と「唯一無二」を担うモデルが完成されたわけですが、UMは今後どのような展開を考えているのでしょうか。宮永 私がMASONの名に込めたように、今回のプロジェクトを機に、UMは積極的に新製品をリリースし、さらなる発展を遂げると期待しています。実際、5月に日本版ユニバーサルの新モデルのチューニングに参加してきたところなんですよ。―― 今後が楽しみですね。本日はありがとうございました。「 低域のアタックを求め、ほかにはない構成に仕上げました(宮永氏)」お問い合わせ:ミックスウェーブ ?03-6804-1681 http://www.mixwave.co.jp/Unique Melodyの輸入代理店であるミックスウェーブの宮永賢一氏。日本向けのIEMのサウンドコーディネーターとして抜擢され、「MAVERICK」「MASON」の開発に携わった。ミックスウェーブ株式会社コンシューマーオーディオ営業宮永賢一氏1.最新の3Dプリンターによってシェルを製作。精度の高い筐体を実現している。2.ネットワークの成形ももちろんハンドメイド。3.ネットワークとドライバーをシェルに詰めているところ。4.ドライバーを詰めた後、紫外線照射装置に入れ、シェルを硬化させる。5.ロゴはステッカー状のものを1個ずつ貼っていく。6.シェルに塗装およびコーティングを施した後、回転型の乾燥器にはめて乾かす。「MAVERICK」および「MASON」は、すべて珠海にあるラボで生産される。3Dプリンターによって製作されるシェルを除く工程が熟練の職人によるハンドメイド。しかも、流れ作業ではなく、ネットワーク成形から、シェルにドライバーを詰める作業、サウンドチェック、シェルのコーティングに至るまでひとりひとりが1個ずつおこなっているというから驚き。そのために、当然ながら生産できる量も限定される。まさにプレミアムなIEMだ。熟練の職人がほぼすべての工程をハンドメイドで製造142536PREMIUM HEADPHONE GUIDE 109