ブックタイトルプレミアムヘッドホンガイド Vol.16
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プレミアムヘッドホンガイド Vol.16
CROSSZONE まさにヘッドホン革命! 音が前方へ 1.トーションバネ加圧による機構と頭部補助パッドによる重量分散で、約485gという重さからは想像できない、驚くほど快適な装着性を実現している。ちなみにイヤーパッドは人工皮革「エクセーヌ」で肌さわりもいい。2.スピーカーから放たれる音と、壁や床を反射する音、その伝達経路をシミュレーション。それを3つのドライバーと音響フィルター、電気フィルターにより、ヘッドホンのなかにリスニングルームを再現する仕組みだ。メインのドライバー2基は40mmLFと23mmHFの2WAYで構成。そのほか内部に40mmCF(クロスフィード)ドライバーが搭載されており、L側ならR側の音を鳴らす。これが頭外定位を実現するうえで重要な役割を果たしている。3.高分子薄膜材料の裏側にベリリウム膜を蒸着させた振動板。1. 2.3.ヘッドホンの常識にメスを入れて「頭外定位」を狙った個性派 ヘッドホンやイヤホンは使っているが、頭のなかで音が鳴る「頭内定位」だけはなじみにくいという人は少なくない。音楽は前から聴こえてくるのが自然なのに、ヘッドホンは左右2つの音源が耳のすぐ近くにあるので、左右の音源の中央、つまり頭のなかにボーカルなどの音像が定位してしまう。普通の聴こえ方と違うので、違和感を覚えるというわけだ。 クロスゾーンの「CZ-1」は、その音像を頭の外側に出して前方に定位させる「頭外定位」を狙ったユニークな密閉型ヘッドホンだ。その快挙を成し遂げた秘密は、三角形の大柄なハウジングのなかに隠されている。内蔵するドライバーは3種類、低域と高域のメインドライバーに加え、音場成分を再生する専用ドライバーを立体的に配置。3つめのドライバーから出る音は、ハウジングに設けられた特殊な音導管で遅延させることで、反対側から回り込んで耳に届く成分を作り出していることがポイントだ。 スピーカー再生では左チャンネルの音が右耳、右チャンネルの音が左耳に普通に届くが、ヘッドホンではそれができない。それならば何らかの方法でその成分を作り出せばよいのではというのが、クロスゾーンの発想。それを電気的に作り出すのではなく、あくまでもナチュラルな音響的手法によって実現していることが新しい。同技術はART(アコースティック・レゾナンス・テクノロジー)と名付けられ、ハウジング外側に一部が見えている音導管構造はADC(アコースティック・ディレイ・チャンバー)と呼ばれる。「アコースティック」は音響的手法のことで、同社のアプローチからは、生々しくリアルな音にこだわる設計思想をうかがうことができる。クロスゾーンがアコースティックな手法を選んだ背景には、同社の技術陣がスピーカー開発に豊富な経験を積んでいることがある。スピーカーに近い鳴り方のヘッドホンを目指す製品はこれまでも存在したが、CZ-1のように入念な音響的アプローチで取り組んだものは例がなかった。 快適なヘッドホンリスニングを実現するため、装着感にもこだわっている。形状を固定したヘッドバンドを採用したこともその一つで、側圧を最適化しつつ分散させる効果が大きいという。約485gとそれなりの重さがあるのだが、いったん装着すると意外に圧迫感がなく、たしかに疲れにくいと感じる。軽量でも側圧の強いヘッドホンは長時間リスニングに適さない場合があるが、CZ-1は重さの割にストレスが少なく、音楽をじっくり楽しみたい人にうってつけだ。スピーカーで聴いているような自然な音の広がり感 ノラ・ジョーンズのハイレゾ音源を本機で聴くと、「頭外定位」ならではの自然な聴こえ方を実感できる。スピーカーのようにボーカルの音像がはっきりと前方に定位するわけではないが、少なくとも頭の内側で歌っている雰囲気はなくなり、声の重心が頭の外側に移動して、自然なイメージが浮かぶ。内側から外側への声のシフトは僅かな距離だが、頭のなかで鳴っていると音響的な圧迫感や閉塞感につながることがあり、疲れやすい。本機の再生音はその違和感から解放されるためか、スピーカーで聴いているような自然な音の広がりがとても心地よく感じられた。 ドライバー構成の余裕が生む広大なレンジ感も本機の聴きどころの一つだ。ポール・サイモン新作アルバムの『リストバンド』に入っている超低音はリズムのパターンが曖昧にならず、粒立ちのよいパーカッションとの対比が鮮やか。一方、高域側の伸びはクラシックのピアノ録音をハイレゾで聴くとよくわかる。高橋アキが弾くサティは、音色の描き分けが精妙で、柔らかい音場のなかに吸い込まれるように余韻が伸びていく。その空間の特徴を普通のヘッドホンで聴き取るのはかなり難しいのだが、CZ- 1で聴くと残響のD E T A I L102 PREMIUM HEADPHONE GUIDE